【Q&A】 Like-kind Exchangeの考え方/解き方
2009年 02月 08日
今回はREGのLike kind exchangeの話をします。どちらも、資産を交換する話で、単なる交換であればgainを認識しないけど、bootがからんでくると、一部、gainを認識する、というところまでは同じなので、混乱しやすい分野です。
ポイントは、①Gainの認識はどこまでするか?と、②受領した資産のAdjusted Basisはいくらか?という問題です。
【2009.7.14 訂正】***************************************************
本記事のコメント欄にokataku様からご指摘を頂いている通り、この後の掲載記事の内容に不備がございました。
Realized Gain/Lossの計算時に使用する取得原価に、本来は税務上の簿価であるAdjusted Basis(AB)を用いるべきところを、Fair Value(FB)を用いてしまったことによるものです。
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昨日のシナリオの続き、とうことで、下記の図6を見てみましょう。
①Gainの認識はどこまでするか?
今、手元に旧機械をFMV100で保有しているとします。これは、当初購入したときは200を払って購入したので、税務上の簿価(AB: Adjusted Basis)は200です。この機械が何かの事情で今、500で売れるようなことがあれば、ABとの差額300(=500-200)が利益認識されるわけですが、実際はFMV100にまでなってしまい、100(=200-100)の含み損が生じている状態です。
さて、今回、この旧機械と引き換えに、新機械FMV90と現金30のセットを受領することになりました。単純な
↑ 誤りです。考える必要はありません。Like-Kind Exchangeで損失の認識はしません。▲80についてはLossはRecognizeされません。ただし、将来、資産売却時に帳尻合わせができるように、この▲80を受領資産のBasisに加算します(←後述②参照)
昨日と違い、ここでは、「Gain realizedは原則全額Gain recognizedとして認識する。但し、Bootの額を上限とする」と考えます。
上の図6で見てみましょう。Realized Gainは20です。一方で、受領した現金(Boot)は30です。20<30なので、Realized Gain の20はまるまる、課税対象としてRecognizeされることになります(Gain recognized)。
税務当局(IRS)の立場で考えると分かりやすいかもしれませんね。
IRS「同種資産を単に交換しただけで計算上gainが出たからと言って課税しては確かにかわいそうだ。その部分の納税をしようとしても、計算上利益がでているだけで、実際に現金が手元に入ったわけじゃないんだから、ひどい場合は交換で受領した資産を売却して現金化しないと納税ができない、といったことになってしまうだろう。でも、でもね。もし、現金(Boot)をもらっているなら、話は別だ。現金をもらっている部分は、そのまま納税できるでしょう?だから、計算上発生した利益のうち、現金で受け取っている額までは、課税させてもらうよ。」
どうでしょう、FARのNon-monetary exchangeと区別して理解できましたか?最終的に計上するgainの金額が変わってくるわけですね。
②受領した資産のAdjusted Basisはいくらか?
さて、税法の場合、もうひとつ、Basisというポイントがあります。受領した資産のABをどう認識するか?これもFARの受領した資産のBVの計算と区別して整理できていなければいけません。
さっきの図6をもう一度見てみましょう。
Like-kind exchangeの場合、ABの計算は下記のようになります。
新しく受け入れる資産のAB
=「交換で引き渡す資産のAB」 +「Bootなどのせいで認識されるGain」
(従って、Gainが認識されない場合は、ABは変化せず)
図6の例だと、もともと、旧機械のABが200でした。今回、
したがって、
新しく受け入れる資産(現金+新機械)のAB=
= 「旧機械のAB(200)」+「Booなどのせいで認識されるGain(
この
従って、
ここで、「よくできとるな~」と思うのは、旧機械で生じていた含み損
え?たまたまじゃないかって? では、もう一例見てみましょう。
図7を用意しました。
①Gainの認識はどこまでするか?
↑この記述がおかしいですね。売却"前"の旧資産のFMVという怪しげな(?)数字をもってきたのが失敗でした。あくまでも、含み損の計算は、実際に交換して受領する新資産のFMVの合計(含、Boot)と比較します。
したがって、旧資産AB:200-新資産FMV(110+10)=▲80となり、先の事例同様、損失が発生することになります。先ほどと同様、Like-Kind Exchangeで損失の認識はしません。したがって▲80についてもLossはRecognizeされません。ただし、将来、資産売却時に帳尻合わせができるように、この▲80を受領資産のBasisに加算します
さて、今回、この旧機械と引き換えに、新機械FMV110と現金10のセットを受領することになりました。単純な利益(gain realized=total gain)は
あのルールを思い出して下さい。
「Gain realizedは原則全額Gain recognizedとして認識する。但し、Bootの額を上限とする」
従って、20の利益のうち、Gain recognizedとなるのは、現金で受領した10まで、ということになります。
②受領した資産のAdjusted Basisはいくらか?
今度はどうなるでしょう。まず、公式を確認
新しく受け入れる資産のAB
=「交換で引き渡す資産のAB」 +「Bootなどのせいで認識されるGain」
図7の例では、もともと、旧機械のABが200でした。
新しく受け入れる資産(現金+新機械)のAB=
= 「旧機械のAB(200)」+「Booなどのせいで認識される(
この
従って、
さて、旧機械の含み損は
今回はというと、新機械のABが
以上、まとめると、ポイントは:
①税務上のGain recognizedの計上のルール
Gain realizedは原則全額Gain recognizedとして認識する。但し、Bootの額を上限とする
②受領した資産のAdjusted Basisの計算
新しく受け入れる資産のAB
=「交換で引き渡す資産のAB」 +「Bootなどのせいで認識されるGain」
(従って、Gainが認識されない場合は、ABは変化せず)
③Gainが認識されるかどうかの判断は提供資産の”AB”合計と受領資産のFMV合計を比較する!
いかがでしょうか? 昨日のFARの記事と読み比べて頂き、論点を整理していただければと思います。
その他、FARのNon-monetary exchangeとREGのlike-kind exchangeの違いといえば、前者が、Lossを計上するのに対して、後者はLossを計上しません。保守主義の観点からLossの計上は見逃さないFARの世界と、徴税当局として損金算入(deduction)ともいえるLossの計上を認めないREGの世界がよく表れていますね。
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ふうー。受験の頃の記憶が風化しかけていた私にとってはヘビーなFARとREGの記事を2つ一気にアップしたので、少し疲れました (^_^;)
ノートPCを叩く私の膝の上では8か月の愛娘が「アー」とか「イー」とか唸っています。
さすがに、君も疲れたかな?パパの作業を邪魔しようと一生懸命だったものね(笑)
でも、久しぶりにUSCPA受験勉強のいい復習になりました。
勉強のチャンスをくださったyuwaさん、ありがとうございました!
ご成功、心よりお祈りしております!