むかしばなし
2007年 07月 12日
陣内孝則が扮する菊次郎はペンキ屋さん、塗装業だ。職人として仕事には真面目だが、それ以外のことは子供のようにだらしない、大酒呑み。室井滋が演じる母のサキは、菊次郎の借金返済のやりくりの為の内職をしながら、子どもたちや同居の母親、そして菊次郎の世話もこなす気丈なひと。
ドラマで描かれている日々の生活では、菊次郎が暴力を振るってサキが嗚咽をあげるシーンも度々だ。
それでも、本当は、幼い頃に父親と離れて以来、ずっと寂しい思いをしてきたのは菊次郎。以来、不運もあっていろいろうまくいかず、お酒に向かうようになった。
そんな菊次郎が本当は優しくて正しい心を持っていることを誰よりサキが知っているから、最後は家族がみんな笑顔のハッピーエンド。
ドラマは、よく見ると、何気ないシーンも、実はみんな、子供だったビートたけしの視点で描かれているのがわかる。やっぱり、一番偉かったのはお母さんのサキ。絶望的局面に面しながらも強く立ち向かい、乗り越えてきた。でも、サキが頑張ってこれたのは、酒飲みの菊次郎が本当は愛すべきヒトだったから。本当に菊次郎が根っからダメなひとだったら、三行半だったはずだ。
陣内さんと室井さんが上手にコミカルに演じてるので、一緒にテレビをみてた家族は可笑しそうに笑っていたけれど、私はじーっと見入ってしまった。ドラマのひとコマひとコマが、自分の子供ころの実家の様子と瓜二つだったからだ。父親と母親の様子とそれぞれの背景もそっくり。違うのは20~30年くらいの時代背景のズレくらいのもの。それ以外は全く同じで、思わず、私の幼少時代の話かと思ったほど。菊次郎がちゃぶ台をひっくり返して、サキが声をあげてなくシーンなど、場面によっては、昔を思い出して、とても切なくなった。。。
でも、それも今では昔話。現在は私の父の商売も軌道に乗ったようで、母もようやく人並みの生活をエンジョイ出来るようになった。本当に、ようやく、だ。もう還暦を過ぎた父だが、これからももっともっと元気に頑張って、これまでの母の労に報いてあげて欲しいと思う。
そんな両親のもと、経済的には貧しい環境の中で、私を大学まで出してくれたことにとても感謝しているし、そうした環境の中でとてもたくさんのことを学んだように感じる。ある意味、誰よりも豊かな幼少期を過ごさせてもらえたのかもしれない。
母の姿をみて、一生懸命生きることを学んだ。
父の背中をみて、正しく生きることを学んだ。
今の日々の自分の生活に追われて忘れてしまいがちだけれど、思えば大人になるまでにもいろいろと感じて、学んできたと思う。今一度、あの頃のことを思い返しながら、あの時、自分が大人になったらこうしよう、と思っていたことをもう一度思い出してみたいと思った。