Q&A: 【重要】 Diluted Earnings Per Share
2007年 12月 24日
今日も、ご質問をemailで頂戴しましたので、下記の通り、nn的解法案と共に、問題を皆さんと共有させていただければと思います。
今日まとめてみた分野は、少しややこしいけど、基本中の基本です。
公式の丸暗記に頼ると、すぐ忘れるし、類似の公式と紛らわしくなるし、応用問題がでると凹む分野です。しかし、ひとたび理解して腹に入ると、公式の暗記も超スムーズになる分野です(東京に来て、今、初めて「超」を使ってしまいました;汗 “めっちゃ”という意味です;笑)
その分野とは、ずばり、DEPS!
前置きが長くなりましたが、下記が頂戴したメールの抜粋です。
--- Question from T-san ------------------------------------
今回はdiluted earnings per shareの問題についてわからないことがあり
メールをさせていただきました。おわかりになれば教えて下さい。
問題
A company reports net income of $500,000 and pays its preferred stockholders cash dividends of $60,000. There are 100,000 shares of common stock outstanding so that the basic earnings per share to be reported $4.40 ($500,000 minus $60,000 equals $440,000 divided by 100,000 shares). The company also has 10,000 bonds outstanding. Each bond can be converted into two shares of common stock. If the company has a tax rate of 30 percent, what should be reported as its diluted earnings per share for the period? (round to the nearest penny)
a, $3.08
b, $3.26
c, $4.08
d, $4.25
答え: c
解説では(500,000-60,000+70,000-21,000)÷120,000株=4.08 となっています。
なぜ「-60000」があるのですか?
converted bond での希薄化は”If converted”methodで計算すると認識しています。転換後の普通株式数と社債に対する利息が無くなる。
{NI + interest exp.(net of tax) }÷{weighted-average of CS outstanding + shares issued upon conversion of preferred &conversion of bonds}
(500,000+70,000-21,000)÷120,000株 じゃないのですか?
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Diluted Earnings Per Share(希薄化後一株当たり利益)に関するご質問です。
ご質問のポイントは、$60,000のpreferred stockholders cash dividends(優先株式への現金配当)を分子の減算項目として勘案するか、しないか?ということです。
EPSもDEPSも基本的な考え方は同じですので、自分自身の復習も含めて、どうしてそもそもEPSの計算においてpreferred stock dividendsを分子の減算項目にしたのか、確認してみましょう。
基本的一株当り利益(EPS)の計算は下記の通りです。
Basic EPS= (Net Income – Preferred Dividends) / Weighted Average Number of Common Shares Outstanding
これは、普通株式(Common Shares Outstanding)を保有する投資家が、「自分が持っているこの株、一株あたりどれだけの利益を生んでいるんだろう?」と考えるときの目安です。
単純に考えると、
Basic EPS= Net Income / Weighted Average Number of Common Shares Outstanding
となりそうです。
しかし、この分子のNet Incomeからは、普通株主への配当をする前に、まず先に、優先的に、優先株主への配当(Preferred Dividends)が支払われます。これは、普通株主からすれば、企業のNet Incomeから天引きされるというか、とにかく、自分の手元にはまわってこない利益の部分です。だから、普通株主が「自分が持っているこの株、一株あたりどれだけの利益を生んでいるんだろう?」と考えるときには、計算に入れないんですね。
ということで、
Basic EPS= (Net Income – Preferred Dividends) / Weighted Average Number of Common Shares Outstanding
となるわけです。
これがEPSの計算において分子のNIからPreferred Dividendsを減算する理由であり、この考え方は、DEPSを考えるときも基本的には同じです。
さて、DEPSのケースを考えて見ましょう。
Diluted Earning Per Share(希薄化後一株あたり利益)を考えないといけない理由は、当該企業がConvertible Preferred Stock(転換優先株式)、Convertible Bond (転換社債), Stock Option(株式購入選択権), Warrants (新株引受権)なんかを発行しているときです。こういったものを発行していると、転換されたり、権利行使されることによって、EPS計算の分母になる株式数が増えてしまい、そして、分母が増えるということは、一株あたりの計算上の利益は減ってしまう、つまり希薄化(dilute)してしまうわけです。
しかし、実際には、転換したり権利行使したりするかしないかは、まちまちなので、いちいち、「何%が転換されて、何%が転換されなくて、、、」なんて考えてられません。
ということで、「もし全ての転換○○が転換されたら」とか「もし、権利が全て行使されたら」と仮定して計算するのがDEPSです。
で、「もし全てのConvertible Preferred Stockが転換されたら」とか「もし全てのConvertible Bondが転換されたら」というのを考えるときに使うのが、if-converted methodなわけです。
ここで、転換を仮定する対象になるのがConvertible Preferred Stockなのか、Convertible Bondなのか、によって計算式が微妙に変わるので注意です。
では、まず Convertible Preferred Stock。これが全て転換されると、何が起こるかというと、次の2つです。
1:Common Stock Outstandingが増える(分母が増える)
⇒これがそもそもDEPSを考えはじめた理由
2:Preferred Dividend が無くなる
⇒全部転換されて、Preferred Stockが無くなったら、Preferred Dividendsは無くなる
ということで、このときのDEPSの計算は、次のようになります。
DEPS
=(Net Income
/ (Weighted Average Number of Common Shares Outstanding + Shares issued upon conversion of Preferred Stock)
ところが、これがConvertible Bond だと、少し異なります。Convertible Bondが全て転換されるとどうなるかというと、
1:Common Stock Outstandingが増える(分母が増える)
⇒これがそもそもDEPSを考えはじめた理由
2:Interest Expense for Bond が無くなる
⇒全部転換されて、社債が無くなったら、支払利息は無くなる(負債→資本)
ということで、このときのDEPSの計算においては、「1」の分だけ分母を増やして、「2」の分だけ、分子のNet Incomeを増やしてやらないといけません。なぜなら、Net Incomeは、Bond Interest Expense差し引き後の数字だからです。Bond Interest Expenseが無くなったと仮定するなら、Net Incomeに足し返してやらないといけませんね。
ということで、計算式は次のようになります。
DEPS
=(Net Income – Preferred Dividends + Bond Interest Expense)
/ (Weighted Average Number of Common Shares Outstanding + Shares issued upon conversion of Convertible Bonds
上記二つのDEPSの共通点は、if-converted methodを用いて、「もし転換されたら?」を考えている点です。しかし、それがConvertible Preferred Stock なのか、Convertible Bondなのかで、違いがあることがわかると思います。この違いが、まさに今回頂いたご質問のポイントですね。
今回頂いたご質問の問題では、Preferred StockはConvertibleとはなっていません。ConvertibleなのはBondだけです。なので、この問題において、普通株式を保有する投資家が、「自分が持っているこの株、一株あたりどれだけの利益を生んでいるんだろう?」と考えるとき、Convertible Bondについては「もし、これが全部転換されたらどんだけ希薄化するんだ?」を検討するわけですが、Preferred Stockについては、転換される可能性がないので、( Basic EPSを考えるときと同様に )Preferred Dividendを分子のNet Incomeから減算して考えるわけです。
いかがでしょうか?
実際の問題では、DEPSを計算させる問題で、当該企業がConvertible BondとConvertible Preferred Stockを両方持っている場合も出てきます。その場合は、上記の二つの式を組み合わせてればいいわけです。
DEPS
=(Net Income + Bond Interest Expense)
/ (Weighted Average Number of Common Shares Outstanding + Shares issued upon conversion of CPS & CB)
今回は触れませんでしたが、当該企業がStock Option(株式購入選択権)やWarrants (新株引受権)なんかを発行しているときは、上記とは少し違い、「もしこれらの権利が行使されたら、分母が何株増える(何株か増えるけど、対価として投資家から受け取るお金で買い戻せる株式数を勘案すると、差し引き、純増は何株)?」を考えるTreasury Stock Methodを用いるのでしたね。
さて、上記、いかがでしょうか?
私も久しぶりにDEPSを整理したので、受験勉強時代の参考書や手帳を見直して、自分自身復習しながら書いてみました。不足、不備などありましたら、ご指摘ください。
読者の皆様はどうか、Critical Viewをもってお読みいただければと思います。
さて、これから、少しデートに出かけて(笑)、
夜はまた、仕事の勉強にいそしみます(徹夜かも、涙)!